バンド時代の影と影。その④〜また同じステージへ〜

彼が訪ねてきて、普通に観光地スポットへ連れて歩く気にもならなかった。 本人にもその気は一切無かった。 なので、僕は彼を友人の陶芸家の家に連れて行った。 廃村になってしまった山奥に東京から移住し、窯を築いて器を創り、暮らしている。 山から水を引き、林床の斜面に畑を作り、山羊を飼い、自給自足に近い暮らしだ。 そして、本当に豊かに、幸福そうに暮らしている。 僕は、こんな暮らし方…

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バンド時代の影と影。その③〜似た者同士〜

今回、あの頃から20年近くを経て、改めて彼と当時を振り返ることになった。 あの頃と比べて、酒の飲み方も大人になった。 少し贅沢をして、良いビールを、続けて空けた。 現在の彼を慰める為、励ます為、 「Mはあの頃から無口で無愛想だったけど、皆に愛される人気者だったじゃねえか。今だって何も変わらねえよ」 僕はそう言った。本心から。 他人と上手に喋れないことは、辛いことだろう。 で…

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バンド時代の影と影。その②〜ホンモノとニセモノ〜

僕は、一般的におしゃべりが得意であると、自分も思うし、他人にも思われている。 しゃべることだけが唯一の取り柄で武器であると思っているし、 だからこそ社会に出てからは長く営業職を勤めた。 しかし、これは自分にとって、恐らく最も恥ずべき部分でもあるのだ。 お話が上手だと言われれば、口先だけの詐欺師だと言われていると感じる。 愛想が良いと言われれば、八方美人なお調子者の蝙蝠野郎だ…

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